膜タンパク質抗原
膜タンパク質抗原をたくさん生産する技術
膜タンパク質は構造が複雑なので、大腸菌などの細胞系タンパク質発現系で大量発現すると凝集してしまい、正しいフォールディングをした膜タンパク質を得ることが困難です。また、細胞にとって重要な機能を担っている膜タンパク質を細胞にたくさん作らせると細胞のシグナル伝達や細胞内環境を乱してしまい、細胞がタンパク質発現を止めてしまうこともあります。
一方で、無細胞タンパク質合成系を用いることでこれらの問題点を解決し、膜タンパク質を大量に作ることができます。膜タンパク質の足場となる「リポソーム」を無細胞系に添加することで、膜タンパク質をリポソーム膜上に埋め込み合成することが可能です。また、無細胞系では合成されたシグナル伝達因子によって系が撹乱され合成量が変化することはありません。私たちは膜タンパク質の大量合成のために「透析重層法」という手法を開発しました。透析重層法を用いれば2回から14回膜貫通ドメインを持つ様々な膜タンパク質の大量合成が短期間で可能です。
私たちは透析重層法を用いて合成したGPCRなどの膜タンパク質を免疫抗原として用い、高品質なモノクローナル抗体作製に成功しています。鋳型となる発現プラスミドがあれば、テスト合成と評価に1週間、大量合成に1週間あれば数mgの膜タンパク質の生産が可能です。
これらの技術の概要についてはプレスリリースをご参照ください。
プレスリリース(愛媛大学, PDF)
日経新聞朝刊
透析重層法による膜タンパク質無細胞合成キットは愛媛大学発ベンチャー企業である株式会社セルフリーサイエンスから販売されています。