スクリーニング技術  

 
 

 

 
 「スクリーニング」という言葉を辞書で調べると、「選択、選定、ふるい分けなどを意味する語」(実用日本語表現辞典)と書いてあります。
 
私たちのミッションのひとつは創薬研究のためのスクリーニングを行うことです。私たちは日々、様々なスクリーニングを行っています。時には膨大な数のタンパク質(プロテインアレイ)の中から創薬ターゲットになるタンパク質を探したり、また特定のタンパク質に効果のある薬剤を化合物のセット(化合物ライブラリ)から選び出したりしています。一般的には、細胞を用いたアッセイを用いてスクリーニングを行うことが多いのですが、我々は無細胞タンパク質合成系を用いて調製したタンパク質とタンパク質間相互作用解析技術  [AlphaScreen] を用いたスクリーニング系を構築し、高い信頼性と速度、効率を併せ持ったスクリーニングを実施しています。
 
1日あたり数千から数万アッセイという多数の反応を効率的・安定的かつ安価に実施するためのポイントは、並列化とミニチュア化です。プロテオサイエンスセンターでは384サンプルをnL単位で同時分注可能なシリンジヘッド [Nanohead] を装備した自動分注ロボット [Janus mini] や、96〜1536ウェルプレートに数十秒で試薬を分注することができる分注装置 [FlexDrop] 、手動操作または自動で96/384/1536ウェルプレートの分注が可能な [VIAFLO384] 、AlphaScreen反応を高速に読み取り可能なプレートリーダー[Envision] などの設備を保有しています。私たちはこれらのスクリーニング機器を運用して、28,000種ヒトプロテインアレイや化合物ライブラリのスクリーニングを実施しています。
 
 
 

PROSのスクリーニング設備

愛媛大学プロテオサイエンスセンターの保有するスクリーニング設備を紹介します。我々はこれらの装置を目的に応じて使い分けてスクリーニングを実施しています。

Janus

チップ式自動分注ロボット

  

 
96ウェルの同時微量分注(1-200 マイクロリットル)が可能なチップ脱着式ヘッド2種、プレートやチップボックスを搬送可能なグリッパーとアーム、ハイタワープレートスタッカー、20台までのプレートステージを搭載可能な広いデッキなどを装備した分注ロボットです。

Janus Mini

湿度・温度制御ユニットを装備した分注ロボット

   

 
Nanoheadを用いて384/1536ウェルプレートの分注を行うことを想定して導入された分注ロボットです。微量分注操作中に蒸発により液量が変化しないよう、湿度コントロールするためのエンクロージャーと湿度制御ユニットを装備しています。

Nanohead

384ch シリンジヘッド
 

 
50 nL から1µL まで精密に計量可能なマイクロシリンジを384本搭載した分注ヘッドです。Janus mini に接続して用い、384/1536ウェルプレート間の同時分注が可能です。分注後、シリンジは超音波洗浄する仕様になっており、チップにかかるコストを大幅削減することができます。分注プログラムの最適化により、384プレート1枚の 分注にかかる時間をおよそ2分に高速化しました。

Flexdrop

プレート高速分注装置


 
96ウェルから1536ウェル対応の高速プレート分注装置です。圧縮空気とバルブを用いて1µL〜数十µLの溶液を均一にプレートの各ウェルに分注します。384ウェルプレート全面への分注で約20秒足らずしかかかりません。

VIAFLO384

384チャンネル電動ピペット
 

 
チップ式電動ピペッターです。ヘッドを交換することで96/384本のチップを装着できます。96〜1536穴プレート対応です。パワーアシスト機能がついており、手軽に手動操作による分注が可能です。また、プログラムすることで自動分注も可能です。

Liquidator 96

96穴手動ピペット
 

 
96ウェル同時分注可能なチップ式「手動」分注機です。ピペットマンを用いるのとほぼ同じ感覚でプレート分注が可能です。96穴プレート対応ですが、アタッチメントを用いれば384ウェルプレートへ分注することも可能です。プレート枚数が少なければ、分注ロボットを用いるよりも高速かつ手軽に分注操作を行うことが可能です。P20/P200相当の容量レンジの機体が1台ずつあり、目的によって使い分けています。

Envision

マルチラベルプレートリーダー
 

 
AlphaScreenは620nmの励起光を照射し、それよりも短い520nmの発光を検出するため、専用の測定装置が必要です。この機体はHTS対応ユニットを装備し、正確な高速測定が可能になっています。

支援例:化合物スクリーニング
(コアライブラリ・一次)

東京大学創薬機構の化合物ライブラリを愛媛大PROSでスクリーニング


当研究室では学内外の研究者からの支援要請を受けてプロテインアレイや化合物ライブラリのスクリーニングを実施しています。ここでは化合物スクリーニングを例としてご紹介します。
東京大学創薬機構では28万種の化合物(多くは構造既知)を収集、ライブラリ化し、希望する研究者に無償(送料などのみ実費負担)で配布しています。愛媛大学プロテオサイエンスセンターでは独自に、あるいは共同研究先から依頼を受け、創薬機構に提供していただいたコアライブラリ(代表的な9600種化合物セット)のスクリーニングをこれまでに30件以上実施しております。我々が実施しているのはAlphaScreenを用いたスクリーニングです。AlphaScreenは相互作用解析法の一つで、タンパク質間相互作用やタンパク質-核酸間相互作用を阻害する薬剤を探索できますが、工夫次第で酵素反応やシグナル伝達の解析も可能です。
 
化合物スクリーニング実施スキーム

1. 事前相談、スクリーニングコンセプト決定
2. サンプルリソース提供(依頼者)、アッセイ系構築(愛媛大)、創薬機構へ提供依頼申請(依頼者)
3. 濃度調整された化合物が250 nL ずつ分注された化合物プレートを作成(東大創薬機構)
4. 化合物プレートを愛媛大に送付
5. FlexDropを用いてタンパク質、ビーズを分注、AlphaScreen測定(愛媛大)
6. データ解析、結果送付(愛媛大)、東大への報告書作成、高次スクリーニング検討(依頼者)

 
5.1〜3万化合物程度のスクリーニングでしたらアッセイ自体は半日もかかりません。しかし、スクリーニングの成否はほとんど 1. スクリーニングコンセプト決定 と 2.アッセイ系構築 にかかっています。開戦前に勝敗はすでに決まっているのです。
 

スクリーニングにかかる実費のご負担をお願いしております。創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業など、我々の参画している支援事業をご紹介することも可能です。

 
参考文献:
 
 
 

東大創薬機構の化合物コアライブラリのスクリーニング

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