膜タンパク質の細胞外領域に結合する抗体を作るには

 
 
 

ドーパミン受容体2のトポロジーモデル
細胞膜(オレンジ)の上側が細胞外領域にあたる

    

 抗体は分子量の大きな水溶性のタンパク質です。そのため、抗体は細胞の中に入っていくことはできません。抗体医薬が結合する相手は細胞の外に分泌されているか、細胞表面にいるものでなければなりません。特に細胞表面にいる膜タンパク質の場合、抗体の結合部位(エピトープ)が細胞の外側(細胞外領域)にないと抗体は細胞外から結合できず、抗体医薬として働かせることができません。
 ところが、これまで私たちがいくつもの膜タンパク質でテストした結果、膜タンパク質の細胞外領域に結合する抗体は特に作りにくいことがわかってきました。膜タンパク質の細胞外領域の配列や構造はヒトとマウス、ラビットなどの免疫動物の間で非常に似ていて、免疫動物が異物であると認識しないのが一因です。また、膜タンパク質によっては、タンパク質が細胞膜に埋まってしまい細胞外領域が膜上にほとんど露出しない、あるいは細胞内領域が保存されておらず細胞内領域が優先的に異物と認識され細胞外領域に対する抗体ができにくいということもあります。
 
 私たちは、現在、この問題に対して2つのアプローチで解決しようと考えています。一つは人工的にデザインした人工膜タンパク質を用いたアプローチ、もう一つはヒトから進化的に遠い種を免疫動物として用いることです。
(これらのアプローチについては研究進行中です。成果発表の機会があればお知らせします。)