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PROSセミナー&大学院特別講義を開催しました【6月29日(金)】
プロテオサイエンスセンタープロテオ創薬科学部門主催のPROSセミナーを開催しました。多くの皆さまのご来場、心よりお礼申し上げます。
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【演 題】
上皮を標的とした創薬研究の螺旋的発展
【講演者】
大阪大学大学院薬学研究科附属創薬センター
医薬品・医療機器規制科学研究室
教授 近藤 昌夫 先生
【要 旨】
ドイツの哲学者ヘーゲルは、事物の螺旋的発展の法則を提唱している。これは、事物は螺旋階段を上るかの如く進歩していくという法則である。螺旋階段を上る人を上から眺めると、再び元の場所に戻ってくるように見えることから、事物の発展では古く懐かしいものが新しい価値観を伴って再び現れてくると言われている。
創薬の歴史を紐解くと、既に1961年にはEDTAによる粘膜吸収促進の報告がなされており、この報告が上皮を標的とした創薬の螺旋的発展の端緒となっている。当時、上皮は生体内外を隔てる物質透過障壁として捉えられており、創薬研究者は上皮細胞バリア制御による薬物吸収促進法の開発に傾注していった。
周知のように、現在世界では年間7000万人の命が失われており、このうち感染症が2400万人、悪性腫瘍が800万人を占めている。エイズウイルスなど多くの病原性微生物が上皮を介して生体内に侵入すること、悪性腫瘍の90%が上皮由来であることから、創薬ターゲットとして上皮は大きなpublic impactを有している。しかしながら、90年代まで上皮細胞バリアの分子基盤が詳らかにされることはなく、上皮を標的とした創薬研究は薬物吸収促進法の開発にとどまることを余儀なくされていた。 京大月田グループの一連の解析などにより、claudin family、angulin familyなどの膜タンパク質が上皮固有の構造であるtight junction(TJ)のシール機能を担っていることが見出され、上皮を標的とした新たな創薬の可能性が示唆された。実際、粘膜免疫組織や悪性腫瘍でclaudinが高発現していること、claudinが皮膚バリア・粘膜バリア・血液脳関門バリアを担っていることなどが見出され、claudin等のTJ構成蛋白質が新たな創薬標的として注目されている。
本拙講では、本邦の上皮細胞生物学の土壌に育まれた、上皮を標的とした創薬研究の螺旋的発展についてご紹介したい。<!–[if gte mso 9]>

講演者 近藤 昌夫 先生

セミナーの様子

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