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植物の食害認識システムを解明!
〜食う-食われるの特異的関係における分子機構〜
東京理科大学 有村源一郎教授、愛媛大学プロテオサイエンスセンター 澤崎達也教授、野澤彰講師は岡山大学、東京大学、岩手生物工学研究センターとの共同研究で、害虫の唾液などに含まれ、植物の防御応答を活性化させる因子(エリシター)の認識に関わる植物の制御因子HAKの同定に成功しました。HAKは本研究で用いた重要害虫であるハスモンヨトウのエリシターにのみ特異的に応答し、他の昆虫のエリシターには応答しないことから、生態系への影響を最小限にした遺伝子組換え農作物の開発に応用できると期待されます。
植物では昆虫の食害を受けた際、害虫の唾液などに含まれるエリシターを認識することで、防御活性を高めることができます。これまで様々な害虫種から異なる種類のエリシターが同定されてきましたが、植物がどのようにしてエリシターを認識するのかについては解明されていませんでした。
研究グループは、重要害虫であるハスモンヨトウの幼虫の吐き戻し液(唾液など)に含まれるエリシターの認識に関わるダイズとナズナのタンパク質HAKの同定に成功しました。このHAKは植物が害虫種を特異的に認識し、防御活性を高めるための受容体様キナーゼと呼ばれるタンパク質です。さらに本研究では、HAKは植物ホルモンであるエチレンを介したシグナル伝達系を活性化し、防御活性が高まることも明らかにしました(モデル図)。
これまで害虫の認識機構で作用する分子の同定に成功した例はきわめて少なく、本研究で得られた結果は農作物開発への応用だけでなく、食う-食われるの関係を通じた植物と昆虫の共進化のメカニズム解明にもつながる重要な成果です。
この研究成果に関する論文は、2020年5月8日付けでCommunications Biology誌に掲載されました。
東京理科大学プレスリリース(日本語)
東京理科大学プレスリリース(英語)
